それにしても、大学入試センター試験にはいろいろな意見がありますね。いくつか読みましたが、shioも一言。
大学教員はマニュアル化された業務に最も不適任な人種です。大学教員は同時に研究者であり、その仕事は「研究」です。「研究」とは既存の価値観に疑問を呈し、他の人と異なるアイディアを出し、それを実験し、検証し、公表する仕事です。1年中、こういう検証的思考(クリティカル・シンキング)で動いていますから、その思考様式が染み付いています。「変人」であり続ける宿命なのです。
その「変人」たちに、センター試験の日だけ、全員一律に同じことをマニュアル通りにやれ、というのは所詮無理な話。例えばマニュアルを読んだだけで、「もっとこうした方が効率いいじゃん」などとすぐに思いついてしまい、実験したくなるし、いつもの癖で即実験してしまう。大学教員とはそういう人種です。そうでなければ研究者はつとまらない。
従って、大学入試センター試験の試験監督業務に大学教員を使うのは大間違い。マニュアル通りに業務を遂行する訓練を受けた人材に担当していただく方がいいと思います。人材派遣会社とか予備校などにアウトソーシングするとか、そもそもセンターの運営自体を民営化をしたらいいのではないでしょうか。
そもそも、センター試験は必要かしら。(と、検証思考が働き始める^^)
1年中、各予備校が本番さながらの「模擬試験」を実施しています。それをそのまま「本試験」に認定してしまえば十分なのではないでしょうか。それなら年間複数回の受験機会があります。複数回受験して、もっとも好成績な結果を大学に出せばいい。現状の「模擬試験」を「本試験」に認定する要件を明確にし、実施などにルール違反があった場合はすぐに認定を取消す、といった運用がされれば、クオリティーも担保されるのではないでしょうか。複数の予備校が実施すれば、競争によって質も確保されるはず。
さらに、試験科目のうち英語の試験は、TOEFLのiBTを使う方がいいのではないでしょうか。
本来、外国語で必要なのは「話す」と「書く」です。外国語能力を問う試験では、その2つの能力を問うべきです。しかし、大学入試で問うのはほとんどが「読む」ばかり。近年、一部に「聞く」が入ってきましたが、いずれにしても受動的な言語能力しか問うていません。だから、中学高校のカリキュラムが、「読む」に偏重しているのです。
大学に入学した後留学したいとか、海外でボランティアしたいとか、企業に入ってから国際的に仕事したいとか、その段階になってから外国語を「話す」「書く」能力がない自分に愕然とする、という学生をたくさんたくさん見てきました。必要なのは外国語で表現する能力です。自分を語る能力です。20歳過ぎてから、外国語で表現する能力を身につけようとするのと、10代でそれをするのと、どちらが楽か。明らかに後者です(いや本当は10歳になる前の方がいいんだけど)。だから、なんとかして中学高校で、外国語によって「話す」「書く」訓練を日常的に行うべきなのです。
大学入試で「話す」と「書く」を問うようになれば、中学高校もそれに対応するようになるはず。でも何千人、あるいはセンター試験だと数十万人が一度に受験する大学入試でそれを問うのは物理的に難しい。そこで、TOEFLのiBTを使えばいい。「読む」「聞く」「話す」「書く」能力がバランスよく問われます。TOEFLのスコアは同時に、留学時にも使えるスコアになります。
閉塞感の漂う日本から若者がどんどん海外に出て行くべきこの時代に、そして海外から一人でも多くの人が日本に来てもらえるようオープンになるべきこの社会に、その基盤となる言語教育は表現力重視に即刻シフトすべきです。そのために大学入試を変える。入学考査の項目にTOEFLのスコアを加えることなんて、まったくコストがかからない。むしろ、センター試験やその他の大学入試でリスニングを廃止できたりして、コストを削減できます。
何がベストかわからない。けれど、少なくとも1990年から20年以上も続いてしまった大学入試センター試験(その前の共通一次試験を含めれば30年以上)は、根本的に見直した方がいいのではないでしょうか。大学入試制度が変わっていないということは、中等教育が変わっていない、というに等しいですから。