1501-081219 標準六法
信山社から「標準六法'09」が届きました。
献本、御礼申し上げます。
→http://www.shinzansha.co.jp/081024%20hougaku,.html
「法学六法」とともに、信山社の六法シリーズで好感が持てるのは、冒頭に「法の適用に関する通則法」が掲載されていること。
他社の六法はもれなく憲法が冒頭にあります。
国際私法における準拠法決定の手順からすると、「法の適用に関する通則法」が最初に来るのは理にかなっている。
その意味では、この「標準六法」と「法学六法」は、国際的な視点から編纂された六法ということができます。
一方、抄録のしかたは一考の余地あり。
省略された条文や章について、それが省略されていることがわかるようにしていただきたいと思います。
たとえば、著作権法は「第8章 罰則」全体が省略されているのだけど、この六法を見ると著作権法は「第7章」で終わっており、第8章の存在はその片鱗すらうかがい知ることができない。
これでは怖くて使えません。
しかしそもそも。
思うに初学者が使う六法こそ、一切の抄録はしないで、掲載する法令は必ず全文を掲載し、それ以外の法令は一切掲載しない、といういさぎよい編集をしていただきたい。ひとつの法律は全体として有機体をなし、その全体をもってひとつの価値観を表現している。だからその全体をあちこち読んで(あるいは少なくともその全体像を観察して)、その法律の心を読み取るのが初学者の訓練。初学者向けの六法こそ、完全全文掲載が望ましいのです。
教科書や講義に出て来る条文だけを読めばいいというのであれば、Webで条文を検索すればいい。
「書物」という有体物に書き記された法律を読み解く意義は、条文を何遍も何遍も読み、書き写し、その理解へ至ろうとする道程にあります。書物としての六法を使う過程で、未知の条文に出会い、それと別の条文との関係を検討し、条文と条文との糸を紡ぎながら、その法律が描く世界を自分でも描けるようになっていく。それが条文解釈の道です。
そのためには、一条たりとて、無駄な条文はない。
省略可能な条文なんてない。
「掲載法令数」を競うのではなく、ぜひとも「一切抄録はせず、掲載法令はすべて全文掲載」という編集方針の小型六法が世に出ることを願っております。
「全文掲載」にこそ、価値があります。
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