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2007.04.19

892-070416 広角の反対

R1016968
リコー GR Digital(28mmレンズ)

カメラのレンズはその焦点距離によって、

・21mm以下:「超広角レンズ」
・24〜35mm:「広角レンズ」
・50mm前後:「標準レンズ」
・85〜100mm:「中望遠レンズ」
・135〜300mm:「望遠レンズ」
・400mm以上:「超望遠レンズ」

と呼ばれます。
このうち、「望遠レンズ」という名称、誤解の元だとshioは思います。

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この○○ミリというのは、「焦点距離」(レンズから像面(フィルムやCCD)までの距離)なのですが、一般には35mmフィルムのカメラで写る「画角」のことを意味することが多いです。画角とは、写真に写る左右の範囲。広角レンズで撮ると、広い範囲が写り、望遠レンズで撮れば、狭い範囲が写ります。その範囲がなす角度を画角というわけですが、その角度はだいたいこんな感じ。

14mm : 約114度
17mm : 約104度
20mm : 約94度
24mm : 約84度
28mm : 約75度
35mm : 約63度
50mm : 約46度
70mm : 約34度
85mm : 約28度30分
100mm : 約24度
135mm : 約18度
200mm : 約12度
300mm : 約8度15分

なおズームレンズというのは、焦点距離(画角)を変化させることができるレンズです。たとえば28mm-85mmのズームレンズなら、画角を約75度から約28度30分の間で随意に変化させられるものです。

R1016869

さて「広角レンズ」というのは「広い画角を写すことができるレンズ」という趣旨ですから、名前と実態が合っています。一方、「望遠レンズ」という名称は実態に即しているでしょうか。「望遠」とは「遠くを望む」。でも広角レンズでも遠くも撮る。一方、望遠レンズで近くを撮らないかというと、そんなことはない。たとえばアイドルのポートレート撮影で、すぐ近くにいるアイドルを望遠レンズで撮ることはよくあることです。つまり「望遠鏡」と違って、カメラのレンズの場合、必ずしも望遠レンズは遠くを撮るためのものというわけではないのです。

R1016879
遠くのサンフランシスコの街。画角は「広角」28mm。

考えてみると、「広角」の反対は「狭角」。
だから「望遠レンズ」じゃなくて、「狭角レンズ」と呼ぶ方がふさわしいのではないでしょうか。

R1016915

ちょっと離れたところにあるものを撮影するとき、レンズを「望遠側」に「ズームする」ことが多いのではないでしょうか。でもそうすると、確かにそのものは大きく写るものの、写る範囲が「狭角」になっているため、背景も狭い範囲しか写らなくなります。それを意図しているのであれば全くかまわないのですが、その場の背景も一緒に写し込みたいなら「望遠側」にすべきではありません。

R1016906

たとえば観光地での記念写真。
五重塔を背景にして人を撮りたいという場合、その人がちょっと離れた場所にいてズームを「望遠側」にしたら、五重塔の1階か2階部分までしか写真に収まりません。ちょっと「遠く」にいる人を、もうちょっと「遠く」にある五重塔と共に撮りたいにもかかわらず、ズームを「望遠側」にすると、目的が達せられないのです。なぜなら、それは「望遠」ではなく「狭角」だからです。

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五重塔を上まで入れたいのであれば、ズームの「広角側」を使います。
ズームの広角側で、五重塔全体が写し込める場所に立ってカメラを構え、被写体となる人には、できるだけ撮影者の近くまで来てもらいます。すると、すぐ近くに立った人を大きく撮りつつ、その背景に、離れた場所にある五重塔も下から上まで全景を入れることができます。

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遠くのサンフランシスコの街を背景に、カメラ前10cmにある花を撮影。画角はもちろん28mm。

同様に、平常、何かを撮りたいときも、その撮りたいモノと背景との関係を考えて、どの程度の範囲(画角)で写したいのかを決めます。ちょっと離れた場所にあるものでも、レンズは広角にセットし、自分がそこまで近づいて撮れば、そのモノは大きく、かつ背景も広く捉えることができます。一方、背景はあまり写真に入れたくないということであれば、レンズを狭角(つまり、いわゆる望遠)にセットして撮れば、背景は一部分しか写真に入ってきません。

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「遠くのものを撮る」という「望遠」概念は捨てて、写る範囲が狭い「狭角」と呼んだ方が誤解が少ないのではないか。ズームの「広角側」と「狭角側」とか、「広角レンズ」と「狭角レンズ」とか。レンズの焦点距離を、純粋に「画角」と捉えて、その広狭で絵作りをしていく、という理解をした方が、思いどおりの写真が撮れるようになると思います。

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「広角」の反対は「望遠」じゃなくて「狭角」と述べたついでに、「望遠」の反対語(対語)にも付言しておきましょう。「望遠」は、遠くにある被写体を撮影するわけですから、撮影者(カメラ)から被写体までの距離が長い状態です。ということは、その反対は撮影者と被写体の距離が近い状態、つまり「近接」。写真撮影では、「接写」とか「マクロ撮影」と呼ばれるものです。またそれが可能な(被写体に近寄って大きく写すことができる)レンズを「マクロレンズ」と呼びます。

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リコー GR Digitalで数cmから「マクロ」撮影。

マクロレンズには、50mm、90mm、100mm、180mmなどがありますが、このうち180mmのマクロレンズは、「望遠マクロレンズ」と呼ばれます。この呼称がいかに滑稽か。「望遠近接撮影レンズ」といっているわけです。画角が狭いレンズを「狭角レンズ」と呼んでおけば、「狭角マクロレンズ」と呼ぶことができます。このほうが実態に合っているのではないでしょうか。

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Comments

カメラレンズの焦点表示、Shioさんの言われるように角度表示にすると良いですね。そうなると35mmに換算して何ミリとかの表現が要らなくなります。どのカメラを持ってきても仮に「75度」であれば画角は共通です。それでも慣れるまでは換算が必要かもしれませんね。

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