750-061102 迷路
サンフランシスコ在住の方と仕事の打ち合わせ。たいがい、shioがサンフランシスコまで赴くか相手がshio宅やスタンフォードまでいらしてくださるのだけれど、ハロウィーン前だし天気もいいので、中間地点あたりのPumpkin Patchで会うことになりました。それで行ったところが今回の写真。
Arata Farmというところです。
→http://www.aratapumpkinfarm.com/
ここはなんといっても巨大な迷路がウリ。
→http://www.aratapumpkinfarm.com/maze.htm
1人5ドル。4人なら18ドル。5人なら20ドル。1日何度でもトライできます。
これはすごく楽しかった。
1回目はまず、すべての道を行ってみる。行き止まりがあるのは当然として、元の場所に戻ってしまう道が面白い。たくさん歩いて出たところが実はさっきいた場所、という状況に直面したときのなんとも言えぬ脱力感が可笑しくって笑えます。
途中に円形の広場のようになっている場所もあり、そこから道が八方に開いているため、よーく見ておかないと、つぎにそこに戻ってきたときにどの道が既にトライした道かわからなくなります。
ようやく出口にたどり着いたら、ご褒美に金のカボチャをいただきました。
(タイミングによって、もらえない場合もあります)
すぐにまた入り口から入る。
もうアタマの中に地図が描けているので、自由自在。行きたいところに直行できます。一度目の自分と二度目の自分の違いを観察しながら、いつもshioが民法や著作権法を教えているときのことを思い出していました。
人に何かを教えるとき、shioが必ず最初に教えることがふたつあります。
(1) そのものの全体像。
(2) そのものの本質
「教える」と書きましたが、shioの口から伝える、ということではありません。具体例やヒントを出しながら、相手と一緒に考え、相手がその本質を自ら見いだすことができるように導きます。「教育とは教えないこと」と考えているからです。誰かから教わったことなんて翌日にはほとんど忘れてしまいますが、自分で考えてたどり着いた結論なら忘れにくい。そしてもし忘れてしまっても、もう一度考えれば自力でそこまでたどり着けるはずだからです。
さらに、shioが提示することができるのはあくもでも「shioの答え」。それは相手の答えとは異なっていて当たり前です。だから、shioの方から「これはこうである」と、あたかも絶対の真理であるかのようなことを言うことは許されないのです。学問の基本です。「あなたの答えと私の答えは異なる」というのが、学問の前提です。教師は謙虚であることが大切です。相手の方が自分よりも優れた解を見つける可能性も大いにあるからです。
したがって、shioがもし自分の答えを提示するとしたら、それは学生たちがそれぞれ自分で考えて自分の答えを出せるようになってから。
さて話をもどして。
(1)は、地図です。
全体がどのような構造と配置になっていて、各部分が相互にどのような連携を持っているかを把握するのです。shioが1回目に迷路に入って行った作業がこれ。すべての道に行ってみることによって全体像を把握し、「空から見た図」をアタマに描けるようにします。この壁の裏はあの道、とか、この湾曲で何度方角が変わった、とか。実際に高いところにのぼったり上空から眺めたりすることができれば最高ですが、通常は不可能。だからあちこち自分で歩き回ってみながら、アタマの中で全体図を描くのです。
どんな物事を始めるときも、最初にやるのはこれ。
教師はその手助けをします。抽象的なものごとほど、この作業を最初にすることの意味は大きいです。でも抽象的な物事ほど、全体像を描くのは難しい。だから、常に具体的のもので訓練します。人間が(自分が)持っているはずの動物的な地理感覚を磨き、それを抽象的な物事を把握する際にも利用できるようにしておくのです。
shioゼミやshio民法で学生たちが描くのが「民法地図」。
これが、その後の民法理解の強い味方になるのです。
(2)は核心にあるコンセプト。そのものが一体何物なのか、一言で説明できるほどに把握すること。
本質はいつもシンプルです。でも見いだすのはたいがい極めて困難。
「最初に教えること」と書きましたけれど、実際のところ最初にこれを教わってもその真意を理解することは不可能です。最初は「ふーん、そんなものか」くらいにしか思わない。でもそのものの理解が進むにつれて、次第に「なるほど、そういうことだったのか」と見えてくる。そのものごとの本質を追求することこそ学問の神髄であり醍醐味。学問を極めることはものごとの本質を追求することと同義でさえあると思います。
本質はなかなか見えない。だから初心者には、本質が見えている指導者が必要です。
ただしここでも大切なことは、「私に見えている本質とあなたが見いだす本質は異なる(かもしれないし同じかもしれない)」ということ。教師は常にこれを自覚することが必要です。
さて迷路。
1度目に中に入って、アタマの中に地図を作る過程はとてもエキサイティング。2度目に中に入って、でき上がった地図を頼りに歩くのは安心感抜群。「はい、これが全体図です。」と地図を渡されるのではなく、自分でその地図を作るという作業は、とっても楽しくて面白い。自分で描いた地図に基づいてあちこち自在に動き回りながら細部をさらに観察していくのも、実に楽しくて面白い。
学問にはこれと同じ楽しさと面白さがあります。
そういう楽しさと面白さを堪能して欲しくて、shioは教師をしております。
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