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2006.08.06

718-060804 比較しない

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撮影はすべてリコーのGR Digital。

先週、選択肢問題の使い方に関して、「知識は早く正確に吸収して、時間と労力を知恵の創出に振り向ける方がはるかに建設的」と書いたけれど、その趣旨を補足しておきましょう。(全文はこちら→713-060727 選択肢問題の解き方

選択肢問題で、たとえばウソの選択肢が3つと正解の選択肢がひとつあるとします。もしこれを律儀に考えて、4つの選択肢を順に読んで、そこからひとつの正解を見つける作業をすると、ひとつの「正解」を見つけ出すことに多くの労力と時間を使うことになります。するとたいがい、その「正解」を見つけ出したところで満足し、それ以上、考えることなくその問題は終了、次の問題に取りかかるでしょう。でも、それは、その問題について何も考えていないのと同じです。

本当に大切なのは、「正解」とされている選択肢を読んだ後、どうしてそれが正解とされているのか、その内容は本当におかしくないか、本当にそれが正しいと納得できるか、全体の構造とか全く別の情報など周辺の状況から多角的に検討して辻褄が合うか、といったことを考えること。それが学問の出発点です。だから、ウソの中から正解(とされているもの)を探し出すことなんかに時間を使うのは無駄、無駄、無駄。そんな選択肢問題は、生徒や学生に、思考停止を促しているようなものです。真に頭を使うべきなのは、「正解」の向こう側にあります。

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ではshioは、期末試験でどんな問題を出しているか。
○×問題です (^_^)
ただし、理由付きです。

問題文は、こうです。
問1 以下の説明が正しいと考える場合には○、正しいとはいえないと考える場合には×を付け、いずれの場合もその理由を5行以内で説明せよ。
このあとに、(1)〜(7)くらいまで(問題の数は年によって異なります)、問題文が続きます(ちなみに問2は長い論述問題)。

学生は、各問題文に関して○か×を付けたうえで、その理由を述べます。基本的な配点は各10点ですが、加点法で点数を付けているので、優れた答案の場合、12点くらいになることもままあります。この問題の特色は、多くの問題は、○でも×でも正解になり得ること。つまり、そのあとの理由付けとの兼ね合いで、○でも×でも点数がつく可能性があるのです。加点法なので、理に適っているところがあれば、すべて加点するからです。

こういう問題だと、学生たちはその命題自体を考えます。比較の中での相対的な正解ではなく、その命題自体を見つめ、自分の持てる知識と出せる知恵を総動員して、その命題の妥当性を検討します。そもそも絶対的な真など存在しない法律学において、複数の選択肢から正解(らしきもの)を探し出すなどつまらない。ひとつの命題と向き合い、それに対して自分がどう考えるか。そこに法律学の意義があり、面白さがあるのです。

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また選択肢問題を繰り返すことの底には、比較の弊害があると思います。
さまざまな物事を比較することは大切なことです。比較によって各々の「相違」が明らかになるからです。そこから各々の特徴もわかります。でも対象によっては比較に馴染まないものもあります。たとえば人。

社会に比較が蔓延して、比較すること、されることに慣らされすぎていると、自分に対しても、他者との比較の中で相対的に評価するようになります。そのような「比較教育」の中では、自分の軸、自分の価値観の軸といったものの確立が阻害されると思います。また思考においても、「自分基準」にもとづいて自分で考えて結論を出すのではなく、「みんながどうしているか」が価値判断の基準になります。そして「みんな」と違う自分を発見すると、悩み、迎合するか否かの葛藤に直面します。他者の中の自分ではなくて、唯一無二の個としての自分の存在意義をゆるぎないものにするために、周囲の大人が常に「その人自身」を見て、ことばをかけることが大切だと思います。比較は無用。

shioは、ゼミの学生たち、キャンプで出会う子どもたち、その他だれであっても、比較しません。そもそも人間を比較するのはナンセンスだし不可能です。全員、異なるのだから。
だから問題は、○×式プラス理由の論述。その人がどうして○と考えたか、×と考えたか、それを理解することに意味があります。
だから試験の採点も加点法。その人の考えを問うているんだから、「みんな」がどのくらいできているかを基準とした採点はなじみません。「みんな」なんて、無関係です。

同様に、人の創作物、表現物を比較するのもナンセンスです。ひとりひとりが異なる人間だから、その表現が異なるのは当たり前。ひとつひとつ異なる作品、異なる表現なのだから、ひとつの尺度で測れるはずはありません。だから「作品Aは○○○がスバラシイ」という評価のしかたは好ましいけれど、「作品Aより作品Bの方が○○○」という評価の仕方は、shioの感覚に合わない。著作権法は、一つ一つの表現を別個独立のものとして尊重しようとする法体系です。だからshioは著作権法が好き。

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