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2005.06.09

417:050608 相手に伝えるための表現

R0010666
今日、政策研究大学院大学からの帰り道で撮影したもの。Caplio GX8。

昨日の民法2発展講義について、you-wishさんからご意見をいただきました。彼の発言に対してshioがもっとわかりやすい表現をするように促したことについて、抽象化できることが大切だと思っているというご意見です。shioの思いを書いておきます(ほぼ同じ文章を彼のエントリーのコメントに書きましたが、こちらにも載せておきます)。

shioにもそういう時代がありました。
you-wishさんの説明は美しい。抽象度が高くて、包括性があって、shioにはよくわかりました。そしてshioも自分が学生や院生の頃はそれで満足していました。抽象度の高いことばを駆使して具体的な現象を説明するのは本当に面白いし、それが美しい表現にまとまると大変な満足感を得ました。もちろん現在でもそれが必要とされる場面(専門家しかいない研究会など)ではそういう抽象的な表現を多用します。でもそれは、その場にいる全員がその表現で理解できるはず、という大前提があるからです。

しかし教員になってみて、やさしい言葉で語ることの大切さと難しさを身にしみてます。その場にいるすべての人に、あるいは少なくともできるだけ多くの人に理解してもらおうと思ったら、抽象度の高いことばをつなぎ合わせた表現は最も不適切です。伝えたいのに何も伝わらない。伝えたつもりになっているけれど、実は相手は何も受け止められていない。それって表現者として悲しいことだと思うのです。

教員になったshioは、普段からできるだけ平明な表現を用いて学生と語るように心がけています。そして、なんでもっと早くこのことに気づかなかったんだろうと思っています。なぜなら、平明に表現することは、一朝一夕にできることではなく、日々の表現の選択の積み重ねが必要だからです。

だからyou-wishさんのように抽象的かつ的確に表現できるできる人には、そのさらに先にある「やさしい表現」に挑戦してほしいのです。抽象的に表現できることはとても大切なことですから、それをやめろと言っているのではありません。引き続き、自分の思考能力の抽象度を高めて行ってほしい。だけと、その抽象度が極限まで高まったところにあるのは、至極平明な表現だと思うのです。

ものごとの本質は、シンプルで、かつ具体的です。世の中、ものごとの本質を理解している人は、それを平明に説明することができるはずと信じています。実際、たとえばNHKで放映されている「課外授業ようこそ先輩」に登場される各界超一流の方々は、その専門とされる分野の「心」(=本質)を、小学生にきわめて的確に伝えています。道を究めた人の表現は、美しく、わかりやすく、的確で、平明で、具体的かつ面白い。

shioが接する学生たちには、抽象度の高い表現能力を磨くとともに、ぜひ平易な表現ができるようになってほしい。それがshioの願いです。

shioとyou-wishと二人きりで議論をしているのであれば、あの表現で十分です。でも、民法2発展講義の教室にはshio以外に35名の学生がいます。だから、その人たちにも伝わる表現をしていただきたいのです。

さて、今日のshio。
午後、政策研究大学院大学で講義。
今日から3時間×7回で著作権法の講義です。著作権法は、shioが最もシンパシーを感じる法律だから、その心を伝えるのも楽しい。その一方、いつもいつも頭の中を駆け巡っている法律なだけに、政策研究大学院大学の院生の方々には、shioが現在「考え中」のトピックもどんどん話します(そこが先週までの民法の講義とはちょっと性格が異なりますね)。学部の学生相手であれば、既に自分の中で結論が出るなりまとまるなりした内容を中心として話し、ちょっとだけ「その先の話」をするのですが、「院生」でありかつshioと同世代あるいは年上の方々に対しては、shioの学究上の「悩み」をそのままつまびらかにします。shioの学問上の「研究プロセス」を見せることがこれから修士論文を書くみなさんの利益になると思うし、shioにとってもみなさんのご意見を聴くことが貴重だからです。お互いに「contribute」しあえるクラスにしたいと思っております。

シラバスを転載しておきます。
─────────────────────────
1. 本講義の内容
知的財産法制の一翼を担う著作権法について講義します。近年、インターネットの発展、パーソナルコンピュータの普及によって多くの問題が著作権法に投げかけられている。それらの個別の問題を検討するには、著作権法の体系と本質に対する深い理解が極めて重要であるのみならず、日本の法体系における諸法と著作権法の関係を把握し、さらに現象面としての諸技術にまで通暁することが求められます。本講義では、それらの認識にたち、著作権法とは何か、著作権法は何のためにあるのかを常に問いながら、著作権法における諸制度の体系的な構成に対する理解を深めてゆくとともに、先端的な課題を深く検討してゆきます。

2. 成績評価の方法
クラスへの貢献によって評価します。塩澤が発する疑問に対して自己の見解を表明すること、他者の見解に対する意見を述べること、議論を深化させ発展させること、他者の理解に資すること。すべて貢献です。著作権法の含蓄と面白さを味わうためにみなさんで協力しましょう。

3. 各授業のテーマないし項目
第 1回:知的財産権の全体像と著作権法の位置づけ
第 2回:著作権法を取り巻く現状と先端的問題
第 3回:著作物とは何か
第 4回:著作物の具体例
第 5回:著作者人格権の発生およびその性質と効力
第 6回:著作権の発生とその性質
第 7回:著作権の効力
第 8回:著作権の制限
第 9回:著作権の譲渡・消滅
第10回:著作隣接権の性質
第11回:著作権と民法その他の法律との関係
第12回:著作権の侵害とその救済
第13回:著作権法違反の罪
第14回:著作権の国際的保護(各種の条約)
第15回:著作権の本質と将来展望

4. テキスト、参考文献等
『著作権判例百選[第3版]』別冊ジュリストNo.157、有斐閣(2,400円)
─────────────────────────

本日の講義は以下の通り。
・著作権法とは何か
・著作権といえば──up-to-dateなトピック
・著作物とは何か(途中まで)

次回は、著作権法の全体像を概観してから、「著作物」の続きを「メニュー」から。
今日は20人出席。知財プログラム以外の人も7人いらっしゃいました。ウェルカムです。
終了後、Mさんと駅までご一緒。

大学への帰り道、吉祥寺で撮影したのが冒頭の写真。
撮影していると、帰宅途中の助手の人や職員の方々に遭遇。道ばたで花に接近して写真を撮っているshioの姿はかなり怪しいはずです。

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Comments

なるほど。
そう言えばNHKのラジオで子供の素朴な質問に答える番組の先生は本当にわかりやすく語っているなあ、と思い出しました。

抽象的な言葉は、その名の通りさまざまな具体的な事柄を一般化するために抽出された現象を表現しているので、守備範囲が広いために、誤解を招く可能性があるんだと思います。

逆に具体的になりすぎると、個々の人間の具体的な現象に合わせてリアルに語れる反面、人間一人一人の異なる状態にフィットしない可能性もある気もします。

ただ、「本当に相手に理解してもらいたい」と思って表現すれば自ずとバランスのとれた表現に近づいていくのではないかと思います。

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