064:040526 含蓄
1限、2限:大学院のゼミ。
院生Y曰く、
「shio先生ほど条文をよく読む先生に会ったことがありません。」
条文はスルメみたいなものです。噛めば噛むほど味が出る。条文から読み取れることは無限にあります。非常に含蓄に富んだ文言の集積です。何年も読み続けている(繰り返し読んでいる)条文だけれども、日々、新たな発見があります。
またY曰く、
「それだけ条文の文言を大切にしているshio先生が、拡大解釈や類推解釈をするときって、どういうときですか。」
民法の目的は何でしょう。
戦後にできた法律にはほぼすべてそれぞれ1条にその法律の「目的」や「趣旨」が書かれています。それらの法律に書かれている個々の条文の解釈指針となる最も重要な規定です。しかし民法にはそのような「法目的」が書かれた条文が存在しない。したがって民法を解釈する我々は、解釈する大前提として、民法という法律の法目的がなんであるかを明確にする必要があるのです。それなくしてどんな解釈もできない。もし民法の目的が明らかでないまま個別の条文について解釈を試みるならば、それはアドホックな、場当たり的な、その場しのぎの解釈に堕す危険を孕んでいることになります。
言い換えれば、法目的の明確化を等閑(なおざり)にしていると、解釈が御座なりになるということです。(「なおざり」と「おざなり」、わかりますか? わからない人はすぐに辞書を引いてくださいね。)
民法の目的が明確になれば、たとえば拡大解釈や類推解釈だと思っていた解釈がもしかしたら「拡大」や「類推」ではないということに気づくかもしれません。条文の文言が生き生きと見えてきて、その適用範囲が明らかになってくるからです。
民法の目的は何でしょう。
十人十色の答えがあると思います。shioの答えはshioの講義をずーっと聴いている人には徐々に伝わっているかもしれません。しかし大切なのは、いつも言うように、自分の答えを出すことです。
shioの答えを教えるのは簡単です。一瞬で終わります。しかしそれはshioの答えにすぎない。たくさんある答えのうちのひとつです。自分で解を見いだすところに学問の醍醐味があるのです。
民法の目的は何でしょう。
ものごとの本質は、いつもシンプルです。
自分の解を、見いだしてください。
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